2024年の箱根駅伝。青山学院大学陸上競技部長距離ブロックが、後続に圧倒的な大差をつけて優勝しました。
フィジカルトレーナーを務める中野ジェームズ修一先生が箱根駅伝優勝の裏には、コアコンがどう関わっていたのか、その舞台裏を取材しました。

お話を伺った方
中野ジェームズ修一
青山学院駅伝部 フィジカルトレーナー (株)スポーツモチベーション最高技術責任者
2023年の箱根駅伝が終わってから、一番大きく変えたのは、コーディネーショントレーニングを増やしたことです。
背景には、厚底シューズの普及があります。厚底シューズの反発力を走りに生かすためには、筋力だけでなく、身体全体をうまく連動させて力を伝える必要があります。
2022年は高負荷の筋力トレーニングを増やしたことで優勝できましたが、翌年はさらに負荷を上げた結果、選手たちの回復が追いつかなくなり、2023年は3位でした。

そこで、筋力トレーニングの割合を減らし、「エンコンパス」というマシンを使ったコーディネーショントレーニングを増やしました。筋力を高めるだけではなく、身につけた力を実際の動きの中でうまく使える身体にしていこうと考えたのです。
選手たちを見ていると、身体の動きが固く、ギクシャクしている選手が目につくようになっていました。厚底シューズ自体はうまく反発してくれるのに、その力を走りにつなげられていない。身体の各部分がうまくつながって動いていないと感じたんです。
特に重視したのが、股関節を中心とした全身の連動です。これまでは、お尻や腸腰筋など、股関節を動かす筋肉を個別に鍛えることが中心でした。
今回はそこから一歩進めて、股関節だけでなく、膝、足首、背骨までを一緒に動かしていくトレーニングを行いました。まず股関節がしっかり動く状態をつくり、そのうえで身体全体がつながって動くことを目指しました。

最初は身体の特徴に合わせて少しずつ変えます。
ただ、段階が進んでいくと、最終的にはほとんど同じメニューになっていきました。つまり、身体の特徴には個人差があっても、「ここまで連動して動けるようになればいい」という共通の到達点が見えてきたということです。
― トレーニングによって、何が一番変わりましたか?
一番変化を感じたのは、股関節を中心とした身体の連動性です。
もちろん、普段のランニング練習がベースです。そのうえで、エンコンパスを使ったトレーニングによって、選手たちが身体の使い方を理解し、それを実際の走りにつなげられるようになっていきました。
出雲駅伝は5位、全日本大学駅伝は2位と、最初からすべてがうまくいったわけではありません。少しずつ身体を適応させていった結果、箱根駅伝では安定した走りにつながったのだと思います。

体幹ケアでは、身体を連動させる前に、身体をゆるめ、体幹を安定させる段階を大切にしています。青学の選手たちも、その段階をしっかり行っています。
「体幹を安定させる」というと、身体をガチッと固めることだと思ってしまう選手もいます。でも大切なのは、体幹は安定しているけれど、手足は自由に動かせる状態です。
特にアスリートは、大きな負荷がかかる中でも、体幹を安定させながら手足を連動させて動く必要があります。だからこそ、
身体をゆるめる。
体幹を安定させる。
そして全身を連動させる。
この順番で段階を踏むことが、とても大切だと感じています。
走ることは、実は私たちの日常動作にも近いものです。歩くことも走ることも、自分の体重を移動させる動作です。
身体のどこかがうまく働かず、連動しない状態のまま動き続ければ、一部分に負担が集中し、痛みや不調につながることがあります。
だからこそ、筋肉を強くするだけではなく、身体を整え、安定させ、全身をうまく連動させて動かすこと。これはアスリートだけでなく、私たちがいつまでも動き続けるためにも大切なことだと思います。