近年、医療やフィットネスの分野で**電気刺激(EMS)**を利用したトレーニング機器が増えています。
電気による筋収縮は、筋力不足がある人やリハビリの現場では一定の役割を果たすことが知られています。
しかし、電気で筋肉を動かす=本来の機能が高まるとは限りません。
特に骨盤底筋は、腕や脚の筋肉とは異なる特徴を持つ特殊な筋群です。
したがって、骨盤底筋においては「ただリズミカルな刺激を外部から与えて収縮させれば良い」という単純な話ではありません。
この記事では、電気刺激を否定するのではなく、骨盤底筋が本来の働きを取り戻すために必要な“感覚入力”の重要性を分かりやすく解説します。
骨盤底筋は、次のような非常に繊細な役割を持つ筋肉です。
内臓を支える(重力に抗う)
排泄のコントロール
姿勢と体幹の安定
これらの役割は、ただ筋力が強ければ実現できるわけではありません。

ポイントは【必要な時に、必要なだけ、自動的に働くこと】
これは、身体のバランスを保つために、足の裏が土踏まずの細かな動きを自然に調整しているのと似ています。
骨盤底筋は、力むほど良い筋肉ではなく、“協調性”と“タイミング”が命の筋肉なのです。
電気刺激には、次のようなメリットがあります。
✔ 一時的、断続的な、人間では不可能な筋収縮を起こせる
✔ 自分で動かしづらい筋にアプローチできる
✔ リハビリ初期には有効な場合がある
しかし骨盤底筋に関しては、これだけでは本来の機能改善にはつながりにくいという側面があります。
その理由が、この記事のテーマである
「感覚入力」
なのです。
骨盤底筋は、手や足の筋肉と違って「意識しにくい筋肉」です。
目で見えず、自分の手でも触れられません。
そのため、多くの人がこう感じています:
「力が入っているのか分からない」
「締める感覚がつかめない」
「動いている実感がない」
ここで大切なのが
“身体の内部感覚(インナーボディセンス)を育てる”こと。
これこそが、ひめトレを含む身体教育の中核概念である感覚入力(フィードバック)の重要性につながります。

私たちの身体は、動きのたびに脳へ大量の感覚情報を送り、「どう動くのが最適か」を学習する仕組みを持っています。
足裏:地面の情報をつかむ
手指:細やかな動きを調整する
目:姿勢バランスを調整する
と同じように、
骨盤底筋も “正しく使う感覚” を得ることで機能が向上する
ところが電気刺激は、筋肉を外部から動かしているだけなので、
❌ 「自分の身体がどう動いているか」という感覚情報が脳に十分に伝わらない
❌ “自分で使う力” を学習しにくい
という特性があります。
言い換えると、
電気で動く ≠ 身体が使い方を覚える
のです。
骨盤底筋の感覚入力とは、簡単にいうと 「自分の身体内部の動きを感じ取る体験」 のことです。
たとえば:
✔ 呼吸に合わせて骨盤底が上下する感覚
✔ 姿勢が変わると骨盤底筋の張りが変わる
✔ お腹・背中・骨盤が連動して動く感覚
✔ 力みではなく“ふわり”と引き上がる感覚
✔ ひめトレの上で座ることで生じる微細な刺激
これらの情報が脳に入るほど、骨盤底筋は自動的に働く能力を獲得していきます。

感覚入力を通じて骨盤底筋の正しい働きが脳と神経と骨盤底筋に「学習」されると…
姿勢が自然と整う
呼吸が深くなる
お腹がスッと引き上がる
尿もれ予防につながる
動きの安定性が増す
など、日常生活の中で自然な変化が起きてきます。
これは「頑張って鍛える」とは違う、使える身体に変わっていくプロセスです。
電気刺激には確かにメリットがあります。
しかし骨盤底筋が本来の働きを取り戻すためには、
✔ 正しい呼吸
✔ 姿勢
✔ 身体の連動性
✔ 内部感覚の学習
といった複合的な要素が欠かせません。
そしてこれらをまとめて得られるのが、感覚入力を主体としたトレーニング「ひめトレ」です。
ひめトレのアプローチが支持されている理由は、筋肉を“鍛える”のではなく、
「使える身体を取り戻す」ための学習システムを提供しているからです。
電気刺激とは別軸の価値を持つ、骨盤底筋ケアの大切な視点として、ぜひ覚えておいてください。