賑やかなスポーツジムの喧騒とは無縁の、落ち着いた時間が流れる場所。そこでは、重いダンベルを持ち上げる音ではなく、自身の呼吸と体の動きに向き合う静かな対話が交わされています。
「ここでは、ハードな筋力トレーニングは一切行いません」

そう語るのは、施設代表のオオツカヒロシ先生です。リハビリの現場に身を置いていた彼がたどり着いたのは、「姿勢」と「動き」の改善に特化した、リハビリテーションに近い感覚のケアでした。
この日、穏やかな笑顔でトレーニングに励んでいたのは、宇吹新次様と悦子様のご夫妻です。
夫の新次様は、かつてハーフマラソンに出場し、テニスも嗜むスポーツマンでした。しかし、長年の酷使がたまったのか、膝の痛みに悩まされるようになります。整形外科で10回もヒアルロン酸注射を打ちましたが、痛みは一向に引きませんでした。
一方、妻の悦子様もまた、腰に深い悩みを抱えていました。椎間板ヘルニアと滑り症を患い、「台所に立っているだけで、腰が痛くてたまらなくなる」という、日常生活さえ困難な状況にありました。
「整形外科に行っても、注射や電気を当てるだけで終わってしまう。家で何をすればいいのかも分からない」。そんな時、ご主人の腰の痛みもきっかけとなり、二人はオオツカ先生のもとを訪ねました。
オオツカ先生は、多くの不調の原因を「前かがみ」の姿勢にあると分析します。骨盤が後ろに引かれ、体の背面がうまく使えていない状態で歩くことで、膝や腰に過度な負担がかかってしまうのです。
「猫背を伸ばす癖をつけ、普段使われていない背面やインナーの筋肉を刺激していきます」。

実際の指導では、ストレッチポールを使った姿勢改善が中心となります。オオツカ先生の指導は優しくも的確です。「ゆっくり、足を揃えて。だんだん上手になってきたら、手を離してみましょうか」。
「主人は本当に真面目に取り組んでいるんですよ。私は不真面目な生徒ですけど、それでもポールに乗ると楽になるのが分かるから、痛くなったら乗るようにしています」と悦子様は笑います。
今年で75歳になる新次様。トレーニングの成果は、意外な場所でも現れています。それは趣味の吹き矢の競技です。
「体幹がぶれると、矢もぶれてしまう。体を動かせる間は続けたいんです」。自分自身の体を維持したいという強い思いが、真面目な取り組みを支えています。
また、周囲の変化も二人の励みになっています。「同級生の中には背中が曲がってきている人もいるけれど、私たちは友人から『姿勢がいいね』『後ろ姿がかっこいい』と褒められるんです」。

オオツカ先生は、この「意識の変化」こそが重要だと語ります。「姿勢が崩れた時にふと気づいて正す。その日々の積み重ねが、体を変えていくんです」。
オオツカ先生のビジョンは、自身の施設に長く通わせることではありません。
「離島の町医者のように、困ったらあそこに行けばなんとかなる、と思われる存在になりたい」。
ここで学んだケアを自宅で実践し、自分の力で健康を維持できる人を増やすこと。それがオオツカ先生の目指す最終的なゴールです。

「自分で動かせる体を維持していきたい」。そう語る宇吹様ご夫妻の明るい表情は、正しいケアと日々の意識が、年齢に関わらず人生の質を高めてくれることを証明していました。